はじめに

 児島湾の現状を少しでも伝えられればと、このホームページを作成しました。

 農地の需要が高まっていた時代から、農地造成と農業用水確保のために、行政によって「干拓事業」「淡水化事業」というもの が日本全国いたる所で行われました。この岡山でも、干拓、淡水化事業が実施されました。その一つが児島湾です。
 元来海である場所に土地を作るのですから、並大抵のことではなかったと思います。そして農地として利用する際に、土地の地盤のもろさや塩害などがあったと、文献には記されています。
 さらに、干拓地で農業をする際に水が不足しているということで、海であったところが淡水湖に作り変えられました。それが児島湖です。自然にできた湖ではなく、人の手によって淡水化され造られた、人造湖です。
 確かに、児島湖は農耕地の用水として有効に利用された面もあったと思います。干拓地も農地として利用されています。
 しかし私は、海を締め切って真水にして湖を造るなど、自然を人の手によって造り変えるのはおこがましい、やるべきことではないという印象を持っています。

 諫早湾や、中海・宍道湖など、なかなか止められなかった公共事業がかつて問題になりました。児島湖はそれらよりは比較的早くに完成していましたが、児島湖を造ることが本当に必要だったのか、他に方法はなかったのか、など反省すべき問題は、現在の私たちに突きつけられています。何故ならばそれは、児島湖の水質汚染という形で現れてしまっているからです。
 児島湖を海と分離して締め切ってしまったために、児島湖に流入する河川から流れてくる生活排水は逃げ場がなく児島湖にたまり続けました。水質が汚染するのは当然の結果でした。そうなると今度は、ヘドロの浚渫、覆砂等、水質浄化のために多額の予算を投入し続けても、改善することが非常に困難になっています。人の手で湖を締め切っておいて、自分たちで汚し、今度は浄化、浄化とあがいている。皮肉な話です。汚すのは簡単だけどそれを元に戻すのは難しい。自然を相手に、人間は無力です。児島湖内に、児島湾からの海水を流入させることでしか改善策はない、という声もあるようです。
 その閉鎖された水域は、透明度が非常に低く、つまりドロドロに濁っていて、底には厚いヘドロの層がたまっています。そこは汚染に強い生物しかすむことの出来ない、死んだ湖です。

 児島湾と児島湖を見に行きました。締切堤防から見て児島湾の水は比較的澄んでいるのに、児島湖ははっきりと水の色が異なり、濁っていました。締切堤防上の湖岸には、採取した大量のホテイアオイが山積みされていました。汚染のひどさを物語っていました。汚染のすすんだ富栄養な水質に強いホテイアオイは、夏季に大量繁殖するのでよく問題になっています。それをほうっておけば、さらに湖水が富栄養化するからです。

 このページでは、児島湾、児島湖の風景と、締切堤防上にある児島湾干拓資料室を紹介しました。また、2007年11月3日に、岡山市の主催でシンポジウム「児島湾の漁業と環境を考える」が開催されました。このシンポジウムについては 岡山県のホームページ に紹介されていますが、当日配布された講演者の資料が非常によい内容で、児島湾について考える上で非常に示唆に富んでいますので、ここに蓄積しておきたいと思います。

 自分の暮らす町の湖が、日本の湖沼のワースト5に入るほど汚いのは、やはり悲しい。児島湖を見たときに、心がほっとするような、癒されるような湖であって欲しい。そう願いつつ、私たち一人ひとりが、児島湖を美しくするためには何ができるのか、小さなことからでも考え実行することが求められている時代だと思います。