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白小豆の利用記録と岡山の生産地

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近代以前、白小豆はどのように利用されていたのか。岡山県下の白小豆の生産地域とあわせて知りたい。

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・『新和菓子大系 上巻』(資料①)によれば、「白小豆は、全国でもその生産量が少なく、ことに関西方面の上菓子屋さんで、備中の白小豆として重宝がられ、事実、おいしいので、製餡材料としては最高級なもの」と紹介されている。


【白小豆の利用記録】

・『日本大百科全書』(資料②)の「菓子」の項には、「鶴屋の練り羊かんは一五八九年(天正一七)、京都聚楽第において豊臣秀吉から大名諸侯に披露された。その姿は白小豆を紅色に仕上げた棹物で、桃山時代を象徴するような華麗さが、紅の深い色からにおいたっていた」と解説されている。

・『日本大百科全書』(資料③)の「千鳥羹」の項には、「島根県安来市の坂田真月堂の名代菓子」として、「備中(岡山県)特産の白小豆を主材に用い、練切り風に仕立てて、糖蜜で煮た丹波大納言小豆を散らした、ぜいたくな棹物」として嘉永年間に創作され、「藩主への献上菓子だったが、明治維新で絶えた」と解説されている。

・『日本国語大辞典』(資料④)の「雲門」(うんもん)の項では、「銘菓の一種。もち米を白あずきの小倉餡で包んだもの」とあり、『鹿苑日録』(資料⑤)の中に「各々賜雲門閑話」(天正19年6月3日)などの記述がみられる。

・天明8年(1788)「私家農業談」(資料⑥)には、「白小豆 疱瘡の薬なり」と記載されている。

・正徳年間(1711-1715)成立とされる『和漢三才図会』(資料⑦)には、「白小豆は米に和ぜて之れを煮るに早く熟す。赤小豆の熟し難きが如くならず、而も味劣らず、故に飯豆と名づく」として「其の豆(甘く平)五臓を補ひ中を調へ、十二指脉を助く。腎の病之れを食ふべし」とその効能にもふれている。

・文化14年(1817)『飲膳摘要』(資料⑧)にも、「シロアヅキ」(白豆)は「甘酸平毒ナシ五臓ヲ補ヒ中ヲ調フ」と書かれている。

・嘉永5年刊(1852)『鼎左秘録』(資料⑨)、文久2年刊(1862)『名菓秘録』(資料⑩)などの近世菓子製法書には、「煉羊羹」の材料の中に「白小豆」が確認できる。



【岡山の生産地域】

・「伝統産地の大納言小豆と和菓子」(資料⑪)では、「備中の大納言小豆と白小豆」の近世期の産地として岡山県立図書館蔵『備前備中御領内産物帳 巻之14』(資料⑫)の「赤小豆の部」に記載された「白小豆」の記述を紹介している。ただし、池田家文庫蔵『備前国備中国之内領内産物帳』(資料⑬)の「赤小豆之部」には「白小豆」の記載が抜けている。

・明治19年7月15日「農商工月報」(資料⑭)の「本縣下著名種苗表」には、「備中國 小田郡笠岡村 甘薯、白小豆」と書かれている。

・明治19年11月5日「萬年會報告」(資料⑮)では、「白小豆并慧苡仁の事」として「白小豆ハ元来大和岡山新潟の三産地に産出す」と説明されている。

・大正8年刊『岡山県産業概観』(資料⑯)には、「川上郡地方に産する白小豆は品質優良にして京阪地方に於て菓子原料として最も賞用せらる」と評している。

・『岡山県農会農業事績共進会報告書』(資料⑰)の「川上郡農會事蹟」によれば、明治41年2月8日に高倉村で開設された「農産物共進會」において「白赤小豆」が出品されている。

・『岡山縣物産共進會事務報告』(資料⑱)は、大正8年4月10日から5月9日を会期として、「岡山縣物産館」(弓之町)や後楽園などで「本縣各種ノ物産ヲ網羅蒐集」、陳列した共進会の報告書である。本書の「岡山縣物産館共進會受賞者一覧」ならびに巻末「附録」には、共進会出品の「白小豆」生産者(受賞者)名と次の住所の記載が確認できる。

   浅口郡玉島町
   小田郡小田村
   小田郡堺村 (参等賞 銅牌)
   後月郡高屋村
   後月郡青野村(参等賞 銅牌)
   川上郡玉川村(四等賞 褒状)
   川上郡富家村(四等賞 褒状)
   川上郡高倉村(四等賞 褒状)
   川上郡日里村(貮等賞 銀牌)
   川上郡松原村(参等賞 銅牌)
   川上郡湯野村(参等賞 銅牌)
   阿哲郡本郷村(参等賞 銅牌)
   真庭郡勝山町(壹等賞 金牌)

・1923年8月10日「山陽新報」(資料⑲)の川上郡の雑報には、「白小豆不作 高山村の特産白小豆」という記事が確認できる。

・『岡山県史 第15巻 民俗1』(資料⑳)には、「白小豆はほとんど作られなくなったが、新見市草間や土橋では今も作っている。有漢町では、備中白小豆という良質のものを産する」とある。

・「岡山県における白小豆の生産・流通」(資料㉑)には、農協アンケートと聞き取り調査による「岡山県における振興局管内別白小豆作付状況」(昭和59年)の掲載があり、「主要産地は、川上郡備中町(推定年間生産量29t)、新見市(同20t)、高梁市(同7t)、阿哲郡哲西町(同6t)などであり、この4市町で県下の50%を占めている」と説明する。

・「岡山県真庭郡久世町における白小豆の取組み」(資料㉒)によれば、久世町の白小豆が「1971年には転作作物として栽培されていた」とあり、平成12年3月に「久世町白小豆生産組合」が設立されていることがわかる。

・「謎多き白いダイヤ、備中白小豆をめぐる冒険」(資料㉓)には、「93年頃、笠岡湾干拓地で収穫された備中白小豆が高値で売れたことから再び気運が盛り上がり、今ではその干拓地が県内一の生産地となっている」とある。

・「『備中白小豆』のブランド強化」(資料㉔)では、真庭市久世と笠岡湾干拓地で続いている白小豆栽培の取り組みについて紹介している。

・2016年10月2日「山陽新聞」(資料㉕)には、岡山県農業研究所による白小豆の新品種「岡山ADZ1号」の開発記事として「白小豆の新品種は県内初。従来種より大粒で収量が多く、風味や色合いも向上させたのが特長という。笠岡、新見市で試験栽培しており、品種登録を経て2、3年後には本格的な普及に乗り出したい考え」と紹介する。

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白小豆の利用記録と岡山の生産地

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①『新和菓子大系 上巻』 製菓実験社,1994,894p. 参照はp.52-53,772-773.
②『日本大百科全書 5』 小学館,1985,927p. 参照はp.181.
③『日本大百科全書 15』 小学館,1987,927p. 参照はp.278-279.
④小学館国語辞典編集部『日本国語大辞典 第2巻』 小学館,2001,1438p. 参照はp.554.
⑤辻善之助『鹿苑日録 第3巻』 太洋社,1935,420p. 参照はp.17.
⑥小野武夫『近世地方経済史料 第7巻』 近世地方経済史料刊行会,1931,642p. 参照はp.296-297.
⑦『日本庶民生活史料集成 第29巻』 三一書房,1980,1014p. 参照はp.984.
⑧小野蘭山『飲膳摘要』,1817,1冊.
⑨国華山人『鼎左秘録』京都 堺屋仁兵衛,1852,1冊.
⑩清談楼主人『名菓秘録』大阪 河内屋真七,1862,2冊.
⑪島原作夫「伝統産地の大納言小豆と和菓子 : 丹波、備中、能登の大納言小豆を事例として」『豆類時報』77,2014年12月,p.27-34.
⑫『備前備中御領内産物帳 巻之14』〔製作地不明〕 〔製作者不明〕,〔製作年不明〕,1冊.
⑬『備前国備中国之内領内産物帳』岡山 岡山県郷土文化財団,1988,360p. 参照はp.28.
⑭岡山縣勧業課「本縣下著名種苗表」『農商工月報』第6号,1886年7月15日,p.118.
⑮大草孝暢ほか「白小豆并慧苡仁の事」『万年会報告』第8年10号,1886年11月,p.667-668.
⑯岡山県内務部『岡山県産業概観』岡山 岡山県内務部,1919,146p. 参照はp.36-37.
⑰岡山県農会『岡山県農会農業事績共進会報告書』岡山 岡山県農会,1914,1160p. 参照はp.155.
⑱岡山県物産共進会『岡山県物産共進会事務報告』岡山 岡山県内務部,1920,434p. 参照はp.183-244,附録11-13.
⑲1923年8月10日「山陽新報」朝刊3面.
⑳岡山県史編纂委員会『岡山県史 第15巻 民俗1』岡山 岡山県,1983,668p. 参照はp.131-132.
㉑山本晃郎「岡山県における白小豆の生産・流通」『農業および園芸』第64巻3号,1989年3月,p.53-59.
㉒平井和樹「岡山県真庭郡久世町における白小豆の取組み」『豆類時報』30,2003年3月,p.11-14.
㉓「謎多き白いダイヤ、備中白小豆をめぐる冒険」『BRUTUS』第34巻第20号,2013年11月,p.52-55.
㉔平井幸「『備中白小豆』のブランド強化」『豆類時報』79,2015年6月,p.11-15.
㉕2016年10月2日「山陽新聞」朝刊5面.

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備前備中御領内産物帳

「煉羊羹」『鼎左秘録』

「煉羊羹」『名菓秘録 』

「雲門」『鹿苑日録』(天正19年6月3日)

「飯豆」『和漢三才図会』

「白豆」『飲膳摘要』

島原作夫「伝統産地の大納言小豆と和菓子」

農商工月報「本縣下著名種苗表」(明治19年7月)

平井和樹「岡山県真庭郡久世町における白小豆の取組み」

平井幸「『備中白小豆』のブランド強化」

NDC classification
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616:食用作物

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