デジタル岡山大百科 | 岡山県立図書館

レファレンスデータベース > カニの自切と再生

カニの自切と再生

質問内容

カニの自切と再生について、詳しい仕組みや様子が知りたい

回答内容

以下の資料に、カニの自切と再生について書かれている。各資料には共通して、自切(自割)とはカニが自分で脚やはさみを切り落とすことであること、自切(自割)した脚やはさみは脱皮によって再生することが書かれている。

①『カニ観察事典』の「ハサミの自切と再生」(p.25)はアカテガニの自切について書かれており、「危険な敵につかまると相手を武器のハサミではさみ、このハサミをもぎおとしてにげます」と説明がある。再生については「自切したハサミのあとには、体液がかたまって膜状の袋ができます。この袋のなかで、新しいはさみ脚がそだちます。そして、つぎの脱皮のときには小さなはさみ脚が再生します」とある。「アカテガニのハサミの自切」、「自切したはさみ脚の部分にできた膜状の袋」の写真がある。

②『アカテガニ』の「ハサミを切りすてる」(p.14-15)に、アカテガニは敵が強すぎて逃げるときや、脱皮がうまくいかないときに、ハサミや脚を切り捨てると書かれている。「元のからだがよみがえる」(p.16-17)には、再生する様子が写真に沿って説明されている。切り捨てたハサミと脚のあとにでてきた小さな袋のようなものや、その後の脱皮の様子がわかる。

③『カニのくらし』の「ハサミとあしを切りおとす」(p.22-23)に、カニは敵につかまるとハサミや脚を切り落として逃げることが書かれている。「切りおとす関節はきまっていて、そこでは血液がながれ出ないしくみになっています」という説明がある。切り落とす部分は「カニのからだを見てみよう」(P.44)に図示されている。再生について「まず、小さなこぶがめを出します。つぎにふくろにつつまれた、小さなハサミになります。すっかり形がととのうと、脱皮のときに、ふくろから出てもとの大きさにもどるのです」とある。とれたハサミの写真と袋に入った状態のハサミの写真がある。

④『カニの不思議』の「捕食者を避ける」(p.138-142)に、カニが捕食者に食べられないようにするための行動が紹介されており、その中に自切がある。またカニどうしの戦いでも自切は起きると書かれている。自切について「自切は傷害に対する反射的、自動的な反応で、傷ついた脚を胴体から切り離す」とある。しくみについては「特別な筋肉が付け根近くにあって、この弱い線に沿って切れるような仕方で脚を曲げる。あらかじめ作られている二枚の薄い膜があって、破断面の傷害と出血を最小限にする。二重膜の一方は、脚と一緒に脱落するように壊れる。そして他の一方は、切り株に一緒に残り、それを封印して出血を妨げる」と説明がある。再生については「再生する脚は薄い表皮層の下に包まれた小さな突出として出発する。そして動物の脱皮のあとには、包まれなくなる。新しい脚は再生していない脚に比べて小さく一般に色は白っぽく、そして二回か三回の脱皮のあとでは元来の大きさに達する。何本もの脚を同時に失うと脱皮周期のスピードが上がり、それゆえ脚は早く再生して機能できるようになる」とある。また「鋏を再生しているシオマネキ」の写真に「小さな突出」が写されている。

⑤『蟹』の「自割と再生」(p.204-209)に、かにの自割(または自切)ははさみと脚にだけ発達していること、敵につかまった時に逃げるための逃避自割と深い傷を負った時に出血や痛みなどの危険から脱するための防護自割があると書かれている。また、生きたかにを熱湯に入れてゆでるときや標本にするためにアルコールやホルマリンに入れたときにも起こると書かれている。自割のしくみについて「かにやえびの脚はすべて七個の節からできている。自割の仕掛けは根元の第二節めにあってここでは神経も血管も節の中央を通っていて、ここに木の葉が落葉するときに葉柄の根元にできる離層のようなしかけができていて、ここから切断されるかぎり被害はないのである」とある。また、自割をおこす脱落節の場所や、自割の順序の図がある。再生については「自割の行われた面にはまもなく新しい脚の芽がめばえてきて、半透明の袋の中に小さい脚の形が発育してくる。そしてそのかにが脱皮をするときにはじめて袋の外に新しい脚がでてくる。新しく再生した脚はもとの大きさよりも小さいこともあるが、磯にいるいそがにやべんけいがになどでは、その小さい袋からでてきた脚は一度でもとの大きさとあまり変わらない大きさで再生してくる」とある。またはさみが自割面から再生していく順序の図、袋のなかで再生しつつあるはさみの写真、脱皮前と脱皮直後を比較した写真がある。

⑥『カニは横に歩くとは限らない』の「カニは自分ではさみを切りすてる」(p.49-54)に、カニは「身の安全と引きかえに、はさみ脚や歩脚を自ら切り落としてしまう」とあり、敵に引っ張られたときの逃避自切とひどく傷ついた場合の防御自切があると書かれている。しかけは、はさみ脚や歩脚の七つの節のうちの根元に近い第二節(基節)にあり、「この関節の中央部をグルッと一回りする「すじ」がある。これが自切面」で、「この自切面には、中央部にだけ小さな穴がある。はさみ脚や歩脚の各節では、ここを通して体液が行き来し、神経が連絡している。この部分で切り落とされるのであれば、体液が流れ出てしまうことはほとんどない。ちょうど、木の葉が落ちるときにできる離層のような部分(自切面)が脚のつけねの方にあり、ここから切り落とすため、命に別状はないのだ」とある。再生は、「自切面で切り落とされた跡には、しばらくすると、その中央部に新しい脚の「芽」がふくらみ始める。これがやや大きくなると、半透明の膜を通して内部に小さな脚が折りたたまれているのが見えるようになる。やがて脱皮すると、折りたたまれていた脚はいかにも解放されたかのように伸び、新しい脚になる。もちろん新しい脚は小さくて白っぽいが、数回の脱皮の後には色も大きさももとどおりになる」と書かれている。

回答館・回答団体

岡山県立図書館

カテゴリ情報

カテゴリ情報レファレンスデータベースレファレンス事例データ岡山県立図書館

メタデータ

レファレンス事例
タイトル
レファレンス事例
タイトル

カニの自切と再生

(カニノジセツトサイセイ)

回答した図書館または団体
回答した図書館
または団体

岡山県立図書館

(オカヤマケンリツトショカン)

情報源(回答)
情報源(回答)

①小田 英智,桜井 淳史 『カニ観察事典』 偕成社 ,1996,39p. 参照はp.25.
②草野 慎二,栗林 慧 『アカテガニ』 アスク,2009,31p. 参照はp.14-17.
③桜井 淳史,小池 康之 『カニのくらし』 あかね書房 ,2005,53p. 参照はp.22-23,44.
④ジュディス・S.ワイス 『カニの不思議』 青土社 ,2015,328,15p. 参照はp.138-142.
⑤酒井 恒 『蟹』 講談社 ,1980,299p. 参照はp.204-209.
⑥武田 正倫 『カニは横に歩くとは限らない』 PHP研究所 ,1992,236p. 参照はp.49-54.

NDC分類
NDC分類

485:節足動物

その他のメタデータを表示
このページのURL
このページのURL

http://digioka.libnet.pref.okayama.jp/detail-jp/id/ref/M2019082314034808021