デジタル岡山大百科 | 岡山県立図書館

嗅ぎタバコ

質問内容

嗅ぎタバコの製品と使用法、歴史について知りたい。

回答内容

①『たばこの事典』
p.278 <嗅ぎたばこ>の項を見る。「製造法には粉砕とすりつぶしと裁刻が、製品形態には乾式と湿式が、用法には鼻腔用と口腔用があり、それぞれ複雑に組み合わされて多様である.」等が書かれている。また、最も普及しているものとしてスウェーデンのスヌスが挙げられており、湿式、口腔用で、ドイツを含む北欧で消費されることが書かれている。「乾式のものは,鼻腔用が多く,英国やアイルランドで消費される.」とあり、18世紀に西欧の宮廷で大流行し、中国の宮廷にも流行したことが書かれている。
p.398 <スヌス>という項目を見ると、「スウェーデンで作られる湿式のオーラルスナッフ.たばこを微粉とし,水分は約50~60%.ひとつまみを上唇と上歯茎の間に付けて楽しむ.」とあり、嗅ぎたばこの見出しも挙げられている。
p.268 <オーラルスナッフ>の項を引くと、「口腔内,主として上唇と上歯茎,または下唇と下歯茎にひとつまみ,ないし一袋の分量を付けて楽しむ嗅ぎたばこ.」と書かれている。
p.133 <Ⅲ たばこ製品の製造 §2その他の製品 4嗅ぎたばこ>に、嗅ぎタバコと噛み煙草をスモークレスタバコの一種として紹介している。<表4:スモークレスたばこの分類の一例>をみると、嗅ぎタバコには口腔用と鼻腔用があり、利用される地域と呼び名が表にまとめられている。本文では、日本では製造されたことがなく、需要もほとんどなかったこと、用語の混乱や地域性などとの関係で統計がはっきりしないこと、消費は下げ止まりであるが、オーラルスナッフが米国や北欧などで今でも盛んなことが書かれている。また、嗅ぎタバコの製法を具体的にいくつか紹介している。第1の例は葉たばこの除骨するか葉柄つきのまま裁断し混合、食塩水を添加し熟成させ、粉砕して発酵させる方法、第2の乾式の例は中骨を主とした原料を破砕、ローストして粉砕する方法、湿式の例は中骨を破砕したものにパイプたばこを混ぜたのち細粉し、容器内で湿気を与えて発酵させ、防腐・除湿目的の食塩や刺激成分や香気成分を添加して仕上げる方法、第3の例はインドや旧ソ連地域などのナスと呼ばれるもので、ルスチカ葉のたばこの微細粉に石灰、羊酪、牛酪、杏仁、胡椒、塩化アンモニウム、香料を添加して仕上げる方法が書かれている。


②『たばこの「謎」を解く』
p.56-57 <「たばこは優雅に鼻で吸うべし」―禁煙令を逆手にとった宮廷マナー>の項で、フランスの宮廷でルイ13世がたばこの煙を吐き出すことが下品であるとして禁止したため、「粉にしたたばこを鼻に吸い込み、その香りや刺激を楽しむ嗅ぎたばこ「スナッフ」を宮廷に持ち込んだ」と書かれている。たばこの葉を粉(スナッフ)に加工するための「おろし金」(18世紀)のカラー写真あり。

③『タバコの歴史』
p.43-45 <スナッフィング>の項に、タバコを粉末にして鼻から吸い込むスナッフィング(嗅ぎタバコ)の風習の起源について書かれている。粉末の主成分がタバコであったかどうかは疑問であり、「マメ科に属するアカシア、ミモザ、オジギソウ、ネムリグサ、ミモザ属に似たピプタデニア、にせタマリンド、ナス科のダチュラ(チョウセンアサガオ)などの麻酔性植物を主成分とするスナッフを摂取する習慣は、南米大陸北部のコロンビアやベネズエラからブラジル・アマゾン中流域、さらにギアナ辺りまで広がっていた」と書かれている。また、摂取する器具や方法については、ヤノマミ族の、長い筒でアシスタントに吹き込んでもらう方法、コロンビアのトゥユカ族の、V字形のチューブの一端を自分の鼻孔に当て、もう一端を自分で口にくわえて吹き込む方法、アンデス東斜面のペルー・アマゾンに住むマチゲンガ族の、二本の野鶏の脛骨を松脂でしっかりくっつけた浅いV字形のチューブの一端を自分の鼻腔にいれ、もう一端をアシスタントがくわえて吹き込む方法が紹介されている。V字形チューブで粉タバコを吸うマチゲンガ族の父子の写真(図21)、チリ、アタカマ地方の紀元600-1000年頃の遺構から出土したスナッフ吸引用木皿とチューブの図(図22)の掲載がある。
p.56-57 フランス王アンリ2世の公使であったジャン・ニコがフランスにタバコを持ちこんだこと、この時の摂取形態はスナッフィングだったと考えられていることが紹介されている。
p.132-134 フランスのルイ王朝時代の宮廷社会でスナッフが流行したことが書かれている。当初は薬であり、薬剤師が乳鉢などを使って調製していたこと、様々な香料が加えられるようになったこと、中骨を抜き取って味付けした葉タバコを紐でぐるぐる巻きにした「キャロット」や「アンドゥイユ」を個人が自分用に下ろし金「ラープ」で下ろすようになったこと、1670年代には工業化が始まり、オランダでは風車を利用したスナッフ・ミルが現れたことが書かれている。また、タバコをすり下ろす神父の図(図38)、タバコの包装紙に描かれた色々なタバコの図(図39)の掲載がある。
p.161 北米でのタバコについて書かれている。イギリスでスナッフが流行しだすとアメリカにも伝わり、「特に一七六〇年頃からは、北部ニューイングランド地方を中心に、エレガントな社会のファッションとなり、以後十九世紀に入るまで、スナッフがパイプタバコを凌駕し続けた。」とあり、当初はイギリス本土からの輸入品だったこと、ニューイングランド地方でスナッフの製造が始められたこと、1750年代にギルバート・スチュアートによってロードアイランドに建設された水力利用のスナッフ製粉工場があったこと、1760年頃ピーア・ロリラードがニューヨーク市でスナッフの製造販売を始めて繁盛したことなどが書かれている。

④『タバコの世界史』
p.18「鼻から吸う嗅ぎタバコでは、紙巻タバコと同等の効率的なニコチンの吸収が可能で、一方、歯茎に挟んで用いる嗅ぎタバコでは、パイプタバコや葉巻、噛みタバコと同じ効果しか得られない。」と書かれている。
p.102 嗅ぎタバコの製造方法が書かれており、例としてフランスで製造されていた、赤みを帯びた色で麝香液とチョウジで香りが付けてある「タバク・デスパニュ」、黄色に着色して麝香液で香り付けされ、砂糖、オレンジの花、ジャスミンで甘味が付けてある「タバク・ポンジボン」が紹介されている他、高級嗅ぎタバコ用にベルガモットやミント、クミン、カラシなどが加えられたりした製品があったことが書かれている。また、イギリスのあるブリストルの嗅ぎタバコ製造業者は、「自らの調合法が一〇〇〇ポンド以上の価値があると見積もっている。」と書かれている。
p.103 しかし、「大衆市場向けの主要な嗅ぎタバコ製品のほとんどは、異国情緒の漂う香りと色など付けられておらず、単なるタバコの粉末にすぎなかった。」とも書かれている。
p.110 18世紀初頭のパンフレットに、鼻の粘膜を刺激してくしゃみを起こし、ごみや過剰な水分が排出される効果と、血管を広げて水分を供給する効果、目角に入れることで充血に効果があり、視覚の保護がなされると述べたものがあることを紹介している。
p.123-124 「嗅ぎタバコはタバコ消費の歴史の上ではやや特異な、一八世紀固有の現象ともいえる。」とあり、タバコ専売局が取引の中心だった19世紀ヨーロッパ諸国のたばこ販売に関する記録が紹介されている。

⑤『世界喫煙伝播史』
p.40 スペインとフランスの嗅ぎたばこの伝来ルートについて、粉タバコの製法が異なることからルートが異なるという説を紹介している。フランスで流行したのは1625年頃で、スペインがセビーリャでスナッフの工場生産を開始した後であること、スペインのスナッフは乳鉢や石臼で挽いた粉(ポルボ=polvo)であり、フランスのスナッフはおろし金で摺り下ろした粉(ラペ=râpé)が主流であることが書かれている。
p.115-116 17世紀半ばから18世紀の終わりごろのオランダでのスナッフの製造・加工について書かれている。国産の葉タバコを用いて、「基本的にはプラムの果汁、蜂蜜、アーモンドなど各種の材料を添加して作ったソースをかけ、加重しながら数週間熟成したのち挽いて粉にする。調合、味付け、熟成や挽き方などにより多くの種類に分かれる。」と作り方の説明がある。保存性に優れたキャロットについて、「おろしたての新鮮なスナッフを好む客の注文に応じて店頭で摺りおろすのである」と書かれている。
p.141-142 スウェーデンでのスナッフについて書かれている。今日でもスナッフが多く消費されているが、摂取法がいつどのようにもたらされたのか明らかでないと書かれている。使い方について、鼻腔摂取のスナッフと「湿度を多く保たせた粗めの粉タバコを指先で小さな三角錐状に固め、上唇と上歯茎の間に収めるオーラル・スナッフ(スヌーフ=口腔摂取のタバコ)」の両方が存在し、オーラル・スナッフは、「のちにティー・バッグの四分の一程度の大きさの袋入へ進化することになる」と書かれている。図5-7a<スウェーデンのオーラル・スナッフ(指先でスヌーフを三角錐状にまとめる)>、図5-7b<スウェーデンのオーラル・スナッフ(上唇と上歯茎の間に入れる>の2枚の写真がある。
p.155-157 図6-5<ロール・タバコまたはキャロットを摺りおろして粉タバコにするラープ(摺金)>の写真がある。
p.197-198 セビーリャ大学のゴルディジョの資料が紹介されており、表7-2<18世紀のスペインにおけるタバコの消費>図7-11<17~18世紀スペインのタバコ消費傾向>からスペイン国内のタバコ消費は、嗅ぎタバコから葉巻へと徐々に推移したことがわかる。

回答館・回答団体

岡山県立図書館

カテゴリ情報

カテゴリ情報レファレンスデータベースレファレンス事例データ岡山県立図書館

メタデータ

レファレンス事例
タイトル
レファレンス事例
タイトル

嗅ぎタバコ

(カギタバコ)

回答した図書館または団体
回答した図書館
または団体

岡山県立図書館

(オカヤマケンリツトショカン)

情報源(回答)
情報源(回答)

①たばこ総合研究センター 『たばこの事典』 山愛書院,2009,4,782pp. 参照はp.133,268,278,398.
②コネスール『たばこの「謎」を解く』 スタジオダンク,2001,239p. 参照はp.56-57.
③上野堅実 『タバコの歴史』 大修館書店,1998,349p. 参照はp.43-45,56-57,132-134,161.
④J・グッドマン『タバコの世界史』 平凡社,1996,356p. 参照はp.18,102,103,110,123-124.
⑤鈴木達也『世界喫煙伝播史』京都 思文閣出版,2015,12,512,63p. 参照はp.40,115-116,141-142,155-157,197-198.

NDC分類
NDC分類

589:その他の雑工業

383:衣食住の習俗

その他のメタデータを表示
このページのURL
このページのURL

http://digioka.libnet.pref.okayama.jp/detail-jp/id/ref/M2021031619170911873