レファレンスデータベース > 「藍建て」の化学的仕組み
「藍建て」の化学的仕組み
質問内容
回答内容
①雑誌『化学』(2015.9)内の論文「藍の伝統技術のなかに息づく化学」では、まず「藍の色素の生成」の項目で、緑色の蓼藍の葉から青色が生まれることについて「蓼藍の葉のなかには、インジカン(indican)という無色の物質が含まれている。これはインドキシル(indoxyl)にグルコースが結合した配糖体で、植物の組織が破壊されると、葉のなかでインジカンとは別の場所に含まれている酵素(β-グルコシダーゼ)によって加水分解を受けてインドキシンに変化し、空気酸化によりこのインドキシルの2分子が酸化的に結合することで青色色素のインジゴになる」と説明されている。さらに「藍染めのプロセス」の項目で、「藍染め色素のインジゴが水に不溶である」ため、「いったんインジゴを水に溶けるかたちに変換して繊維に吸収させ、繊維のなかで再びインジゴにもどすことで染色が行われている。この操作のことを「建てる」という。」と記載がある。そして、このことについて「アルカリ性下で発酵もしくは還元作用をもつ薬品で処理したインジゴは、水に可溶な黄色の物質に変化し、この状態で繊維内部に浸透する。この還元型のロイコインジゴは、空気に触れると酸化されて、再びもとのインジゴにもどる。インジゴは不溶性なので洗っても色落ちせず、すなわち「染色された」ということになる」と解説されている。また、染色の仕組みを表す化学式の図も記載されている。
②『植物染めのサイエンス―万葉の色を化学する―』では、藍染めの染色方法について「乾燥葉やスクモ(藍玉)の含まれるインジゴを還元・酸化という化学反応を利用して抽出し染色する方法があります」とあり、具体的な手法についても「発酵建てによる染色ー藍建てー」の項目の中で「インジゴをアルカリ性のもとで還元して、水溶性の白藍といわれるロイコインジゴにします。それを布に染着し空気(酸素)に曝して酸化すると、水に不溶性の元のインジゴに戻ります」と説明されている。
また、藍に限るものではないが、以下の資料にも染色の化学的なしくみについての解説が記載されている。
③『「染色」って何?第2版』では、染料という現象について「まず、繊維をある温度の染浴(染料と水)中へ入れると、染浴中の染料は、浴中を移動して繊維の方へ移っていき、時間の経過につれて浴中の染料は次第に減少し、繊維中の染料が増し、ある時間で平衡状態(見掛け上、それ以上変化しない状態)になる。すなわち、染浴中で減少しただけの染料が繊維中に移ったのであり、前述したように、その時に繊維を取り出して絞っても、繊維中の染料は留まっており、水洗いをしても簡単に取れない。このように、染浴中の染料が繊維中に移り、そこに留まる収着現象を染色(dyeing)という」と図を併記して説明されているほか、染料分子と繊維構成分子の結合についても記載がある。
④『染色』でも、「天然繊維の染色」「化学繊維の染色」など、章ごとに染色の仕組みについて説明されている。
回答館・回答団体
岡山県立図書館
カテゴリ情報
![]() | レファレンスデータベース > レファレンス事例データ > 岡山県立図書館 |
---|