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出芽酵母と分裂酵母の違い
質問内容
回答内容
①『分子細胞生物学辞典 第2版』の「酵母」の項目には、酵母ついて「出芽で増える単細胞の時期を生活環にもつ菌類の総称。厳密な分類学の用語ではない。出芽でなく二分裂で増殖する分裂酵母も酵母に含める(→Schizosaccharomyces pombe )。子嚢菌類に幅広く分布するが、一部担糸菌類にも含まれる。高いアルコール発酵能を利用して、醸造に用いられるものが多い。自然界では、植物表面、樹液、果実などに生息するが、動物に寄生したり、ヒトに対して病原性を示すものがある。」、「出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae) と分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe) はゲノムシークエンシングが終了しており、ポストゲノム解析が最も進んだモデル真核生物として重要である。」と記載されている。
「出芽酵母」の項目では、出芽酵母について「出芽により増殖する酵母の総称。酵母には、出芽でなく二分裂で増殖するSchizosaccharomyces pombeのような分裂酵母もあるが、大部分の酵母は出芽により増殖する。代表的なものにパン酵母(Saccharmomyces cerevisiae)がある。」と記載されている。
「シゾサッカロミセス=ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)」の項目では、分裂酵母について「子嚢菌類に属する棹形の単細胞真核微生物。有性世代をもつが、通常は一倍体で増殖する。出芽ではなく、細胞伸長と二分裂で増殖するので分裂酵母(fission yeast)とよばれる。栄養が欠乏すると接合により二倍体化したあと、直ちに減数分裂を経て胞子を形成する。」、「出芽酵母(Saccharomyces crevisiae)に比べ、イントロンを保有する遺伝子の頻度が高く、分裂装置や染色体構造などもより動物細胞に近い性質を示す。」と記載されている。
②『日本結晶学会誌』(2015.12)に掲載される記事「出芽酵母と分裂酵母 Saccharomyces Cerevisiae and Schizosaccharomyces Pombe」には、「出芽酵母と分裂酵母とでは分裂の様式に大きな違いがみられ、出芽酵母は出芽(細胞の一端から芽が出て,それが成長し、母細胞から離れて娘細胞となる)により増えるのに対し、分裂酵母は動物細胞と同じように核が2つに分裂した後、細胞の中央に隔壁を形成して分かれることで増殖する。進化的には大きくかけ離れており,分裂酵母は出芽酵母とは3~4億年以上前に分岐したと考えられており、この違いは分裂酵母と動物との違いに匹敵する。」と記載がある。
③『酵母のすべて』では、「基礎研究で使われる実験室酵母としては、出芽酵母 Saccharomyces cerevisiae、分裂酵母 Schizosaccharomyces pombe が代表である。前者は醸造用酵母と近縁といわれている。後者はアフリカや東南アジアで醸造に使用されることもあるが、現在では主に実験室酵母としての存在価値が高い。両酵母は「出芽」と「分裂」と、細胞増殖様式が異なっていることから推測されるように、進化系統的には遠く隔たっている。」と記述されている。同書の「8章 細胞増殖」と「9章 細胞分化」の項目で、出芽酵母と分裂酵母について詳しく解説されている。
④『研究をささえるモデル生物』の「11章 酵母がわかる」では、分裂酵母と出芽酵母の生活環の概略が図示されている。
⑤『バイオテクノロジーのための基礎分子生物学』では、出芽酵母と分裂酵母それぞれの有性生活環が図示され、解説されている。
⑥『細胞が自分を食べるオートファジーの謎』の「出芽酵母の特徴」の項目では、「オートファジーの発見に貢献したのは、ずばり酵母である。実験室では出芽酵母と分裂酵母という二種類がよく使われるが、オートファジー研究で利用されたのは出芽酵母である。」との記述があり、出芽酵母を使って研究する利点が解説されている。
回答館・回答団体
岡山県立図書館
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