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人名だけが思い出せない理由
質問内容
回答内容
①『現代の認知心理学 2 記憶と日常』の「第9章 第3節 日常記憶研究をめぐるトピックス」には「2. 人の顔や名前についての記憶」があり、その中に「(2) 人名の記憶」がある。「人名の想起の難しさ」の項には「人名の想起は、名前以外の個人情報(職業、年齢など)の想起に比べて難しい」と記述がある。またその理由として、「人名の記憶の特殊性」の項に、「人名はあくまでも記号にすぎず、その個人の特徴とは何の関係もない」とあり、「ある人の職業がパン屋ならば、その人の顔を見るだけで、エプロンをしている外見や、パンを焼いている様子などのさまざまな手がかりが思い浮かび、結果として、職業名は想起しやすい。これに対して、名前にはそのような手がかりがないために、顔を見ても名前は想起しにくいと考えられる」と解説されている。また、人名にも職業名にも取れる単語(baker)を顔写真と対にして覚えさせるという実験について記述があり、「職業は想起できて名前が想起できなかった場合が圧倒的に多く(75%)、名前が想起できて職業が思い出せなかったのはわずかであった(5%)」という結果が紹介されている。
②『なぜ、「あれ」が思い出せなくなるのか』の「第3章 あの人の名前が思い出せない 【妨害】」には「パン屋のベーカーのパラドックス」の項があり、資料①と同様の実験について記述されている。また、同じ固有名詞でも人名か職業名かで思い出しやすさに違いが現れる理由について、「職業名の『ベーカー』は、パン屋についての既存の情報から、聞き手にさまざまな関連情報を与えることになる。しかし人名の『ベーカー』がもたらす情報は名前だけだ。先の実験は、人名よりも職業名の方が既存の関連情報や知識を使ってコード化しやすく、記憶しやすいということを示している。そしてこれが、よく知っているはずの名前を度忘れしてしまう理由である」と記述がある。
③『思い出せない脳』の「第2章 情動が記憶を選別する」には「名前だけが思い出せないのはなぜか」の項がある。「名前や(中略)現代社会で知識と呼ばれているものの記憶のことを『意味記憶』と呼びます」、「対を成すのが『エピソード記憶』です。経験や体験に基づいた記憶で、時間や場所や感情などを伴う記憶です」と記述がある。「名前だけが思い出せないのは、名前が意味記憶で、意味記憶が生存に必須ではない記憶だから、情動が動かず、脳にとって思い出しにくいのです」と記述がある。
回答館・回答団体
岡山県立図書館
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