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スギ花粉飛散の予測方法

質問内容

スギ花粉飛散の予測方法について知りたい。

回答内容

①『花粉ハンドブック』では、「数年前まではスライドガラスをダーラム式花粉捕集器に乗せて24時間放置し、空中から落ちてきた花粉を顕微鏡で覗きながら計数するという方法(ダーラム式)が使われてきました。現在では、一定の量の空気を吸い込んで、その中に含まれる花粉数を自動で計数する方法(KH-3000)が用いられています」とある。2021年で終了したが「環境省主導で花粉自動計測器を全国120か所に設置し、リアルタイムで花粉数を測定し、測定結果を『環境省花粉観測システム(愛称:はなこさん)』というシステム上で公開していました」とあり、「その後は民間の気象情報会社などの独自データにもとづく花粉予測に移行しています」と記述がある。また、ダーラム式花粉捕集器の写真が載っている。

②日本気象協会のホームページに「日本気象協会の花粉飛散予測は、前シーズンの花粉飛散結果や気象観測値などの気象データ、および花芽の現地調査の結果などをもとに、全国各地の花粉研究会や協力機関からの情報をふまえて予測しています。」とある。

 以下➂~⑦は、花粉飛散観測法や花粉観測機について説明がある。

➂日本気象協会公式note「Harmonability style」に「日本気象協会では花粉を『ダーラム法』という方法で観測しています。」とあり、ダーラム法で観測している様子の写真や説明がある。予測の仕方については、②と同様の記述がある。

④『花粉症を治す』では「花粉情報の歴史」についての記述があり、1993年に「花粉情報の統一化が始まり」、「ダーラム型花粉捕集器を標準捕集器とすること」とあり、測定方法についての説明がある。

⑤『花粉症の科学』では「1.重力法による捕集(ダーラム法)」の章では、ダーラム型花粉捕集器がどのように計測されるのか詳しい説明と写真がある。
 「2.体積法による捕集(バーカード法)」の章では、「体積法の原理は一定面積のスリットから一定の速度で大気を吸引し、スリット後部に置かれた透明な粘着テープに大気中の花粉などの粒子を衝突させ捕集するものである。」とあり、詳しい説明や写真がある。しかし、「あまり普及していないのが現状」とも記載されている。
 「3.自動空中花粉観測機器の開発」の章では、「花粉の自動観測機器が開発され、実用実験段階に入りつつある。花粉の自動観測機器の原理は吸引した空気中に含まれる粒子にレーザーを当てると、粒子のサイズによって散乱光が異なることを利用している。」とあり、詳しい説明や写真がある。
 また、「一般論としては、夏が猛暑であれば翌年春の花粉量が増えるが、夏の気象条件だけでは翌年春の花粉量予測の精度には限界がある。これは雄花の産生量に影響する夏の降水量が地域によってばらつきが大きくなっていることによる。」とあり、「秋以降にスギ林において雄花がどの程度着いているかを調査し、気象条件と合わせて予測する方法」があり「数値化された雄花産生量と翌年春の花粉飛散量の間にはきわめて高い相関がある。」と記述されている。(※引用は誤字と思われるところも原文の通りにしている。)

⑥『図解天気と気象がよくわかる本』ではウェザー・サービスの「超高精細花粉情報」の提供が紹介されている。「スギやヒノキなどから飛散する花粉の量と大気によって運ばれる距離を各地に設置したセンサーで計測」し、「各地に設置された花粉センサーからリアルタイムで、きわめて正確な花粉の飛散濃度をキャッチすることが可能」と記載されている。

⑦ウェザーニュースのホームページに「『ポールンロボ』は、ウェザーニュース独自のIoT花粉観測機です。全国に1,000ヶ所設置して、空気中に含まれる花粉をリアルタイムに観測します。」とあり、図や説明がある。また、「ポールンロボの誕生以前は『ダーラム法』という、24時間屋外にスライドガラスを置き、付着した花粉を顕微鏡で見て数える方法が主流でした」、「その後、自動観測するポールンロボの誕生により、"リアルタイムな"花粉の飛散状況が把握できるようになりました。」とある。

 以下⑧⑨は、官公庁が行っている花粉飛散予測について説明がある。

⑧気象庁のホームページに「花粉の飛散予測は、環境省や林野庁が提供する花芽の発育状況に関するデータや、気象庁が提供する気象データなどを活用して民間事業者により実施されています。」、「花粉の飛散予測を実施するために必要な気象に関する予測データ」として「花粉の飛散に影響を与える気温や風、降水等の予測データを提供して」いるとあり、「花芽の生育把握に資する情報として、向こう1か月や3か月といった期間の気温や降水量の見通しを、季節予報として提供しています」とある。

⑨環境省のホームページに「環境省では花粉症対策として、花粉飛散量の予測及び観測、関連する調査研究等を実施しています。」とある。「花粉飛散開始情報」などのリンクが貼ってある。

 以下⑩⑪は、夏に気温が高ければ翌年の花粉量が増えるとの記述がある。

⑩『大気生物学入門』の「花粉飛散予測」では「スギ花粉飛散量と気象条件の関係,および新しいスギ花粉情報の考え方について」、「花粉飛散予測の観点」からまとめた記述がある。そのなかに「総飛散量予測」は「5月から12月までの積算気温が大きくなる年の翌年は,スギ花粉の総飛散量が多くなる傾向がある.すなわち,暑い夏と暖冬がきた翌年のスギ花粉総飛散量は,非常に多くなる傾向がある.」とある。

⑪『降水確率50%は五分五分か』では「前年夏の日照時間が多いと翌年の花粉が多くなり、逆に日照時間が短いと花粉数が減少しています。日照時間のほかにも気温や雨量が影響しています。気温が高いほど翌年の花粉が多く、雨量は多いほど翌年の花粉が減少します。気象の変化と花粉数の増減の関係から翌年春の花粉数を地域ごとに予測することができます。」とある。

 以下⑫⑬は、⑤『花粉症の科学』の記述と同様に、夏に気温が高ければ翌年の花粉量が増えるとは言い切れず、スギの雄花の生産量に影響するとの記述がある。

⑫『日本人はスギ花粉症を克服できるか』では「一般に7月の気温が低ければ翌年の雄花の生産量も少なく、高ければ多くなります。しかし、前年の雄花の生産量が多かった年では、7月の気温が高くても低くても雄花の生産量が少なくなります。一般にスギ花粉飛散数の予測は7月の平均気温と翌年のスギ花粉症飛散との相関から行われていますが、年によって、7月の平均気温を用いたスギ花粉総飛散数の予測に大きな誤差が生じるのはこのためです」とある。また、「スギ花粉総飛散数は、花粉飛飛散期間中の気象条件に大きな違いがなければ、基本的にスギ雄花の生産量に強く影響」とあり、「雄花の着花指数とスギ花粉総飛散数の相関は高く誤差が少ないことから、現在では多くの県の林業試験場で、着花指数による翌年のスギ花粉総飛散数の予測がなされています。」と記載がある。(※引用は誤字と思われるところも原文の通りにしている。)

⑬『森と花粉のはなし』では「『8月が猛暑だったから来春はスギ花粉が多く飛ぶだろう』との報道がよくあります。しかし、ツボミの個数まで増えることはなく、大きく育つだけだと、私はみています。」とあり、また「気温刺激が大きければ、必ず効果が出て、翌年が豊作になるとは限りません。どのタイミングで刺激に合うかが大切なことです。」、「豊作の年やその翌年に刺激しても花芽はとくに多くはなりません。」と記載されている。

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(スギカフンヒサンノヨソクホウホウ)

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①日下石碧『花粉ハンドブック』 文一総合出版,2023,127p. 参照はp.20.
②日本気象協会ホームページhttps://tenki.jp/pollen/expectation/
(2025年3月2日確認)
➂日本気象協会 公式note「Harmonability style」のホームページhttps://note.jwa.or.jp/n/n597092bdca12
(2025年3月2日確認)
④三好彰『花粉症を治す』 PHP研究所,2003,189p. 参照はp.104-106.
⑤斎藤洋三,井手武『花粉症の科学』京都 化学同人,2006,181p. 参照はp.44-48,152-153.
⑥岩槻秀明,ウェザー・サービス『図解天気と気象がよくわかる本』 笠倉出版社,2014,191p. 参照はp.176.
⑦ウェザーニュースホームページhttps://weathernews.jp/s/topics/202111/280065/
(2025年3月2日確認)
⑧気象庁ホームページhttps://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kurashi/kafun.html
(2025年3月2日確認)
⑨環境省ホームページhttps://www.env.go.jp/chemi/anzen/kafun/index.html
(2025年3月2日確認)
⑩川島茂人『大気生物学入門』 朝倉書店,2019,125p. 参照はp.22.
⑪村山貢司『降水確率50%は五分五分か』京都 化学同人,2007,211p. 参照はp.149-150.
⑫平英彰『日本人はスギ花粉症を克服できるか』新潟 新潟日報事業社,2005,70p. 参照はp.22,36-37.
⑬齋藤秀樹『森と花粉のはなし』名古屋 ブイツーソリューション,2016,203p. 参照はp.131,142.

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日本気象協会ホームページ

日本気象協会 公式note「Harmonability style」のホームページ

ウェザーニュースホームページ

気象庁ホームページ

環境省ホームページ

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451:気象学

653:森林立地.造林

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