かいとうないよう
ご指摘のとおり、「確定給付企業年金法」の成立により、適格企業年金(適格要件)は廃止されることになりました。 現時点で適格企業年金に加入している企業は、平成24年3月までにつぎのいずれかに移行または解約することが求められています。 ①厚生年金基金に移行する ②確定給付企業年金(規約型または基金型)に移行する ③確定拠出年金(401k)に移行する ④中小企業退職金共済制度(中退共)に移行する ⑤企業年金を解約する ⑥その他 このうち、①の厚生年金基金への移行は、このところ基金の解散や脱退が相次いでいることなどからみても論外でしょう。 ②の確定給付企業年金への移行は、国がさかんにこれを薦めています。また、当面「積立不足の解消」は求められてはいません。 ですが、確定給付型の年金であり、かつ受給権保護の一層の強化や簡単にはやめられないことなどから、中小企業にとって魅力があるとは思えません。 ③の確定拠出年金(401k)は、銀行などがさかんに薦めているようです。 ですが、投資教育のコストや60歳にならなければもらえない制度であることなどを考えると、いまのところこれも中小企業においてあまり魅力があるとは思えません。 ④の中小企業退職金共済制度(中退共)は、適格企業年金の資産を中退共に移すことが可能(ただし、制約あり)ですし、毎月の掛け金だけを管理しておけばよいので、中小企業にとってメリットは大きいと思います。⑤の企業年金の解約は、解約の時点で退職金制度自体も廃止するのか、あるいは退職金制度を残すのであれば支払準備金について別の手段を講じることが見込めることができるのであれば、それもよいでしょう。 ただ、適格企業年金は、解約するとそれまでの積立金が社員に支払われ一時所得として所得税・住民税等が課税されるので、その扱いについて考えておくことが必要です。 気をつけなければいけないのは、企業年金の解約をたとえ行ったとしても、それはファンド(積立手段)が消滅しただけで、監督署には従前の制度(企業年金規程等)が残っているのです。 解約しただけで、退職金制度(規程)そのものを変えないと、従前どおりの退職金を支払うという「契約」は依然として残ったまま。 生保や信託銀行の言いなりで場当たり的に解約だけしてホッとしていると、将来大きな「経営リスク」となってハネ返ってくるので細心の注意が必要です。 というわけで、④の中小企業退職金共済制度(中退共)をベースにしながらも、そこに各企業の創意工夫を反映させた「新退職金制度の確立」か、⑤の企業年金自体の「解約」あたりが、中小企業においては現実的な選択肢となるものと思われます。 一方、企業年金の本質的な問題は、退職金制度そのものにあります。 退職金が基本給や勤続年数に連動していると、定年時の退職金支給額がいくらになるか分からないなど経営的に極めて不安定です。 退職金制度そのものの改革については、退職金と基本給や勤続年数との連動関係を断ち切ることが大切です。 職金と基本給が連動しているからこそ基本給自体がいびつになり、連動しているからこそ基本給の改革が遅々として進まないことになります。 退職金と基本給や勤続年数の連動関係を断ち切るには、大きく分けるとつぎの方法があります。 ①定額方式 ②別テーブル方式 ③ポイント方式 ④上記のミックス方式 退職金は、あくまで老後保障の一助としての必要最小限度の額とし、業績貢献度に対応させた処遇は「その時払い」で賃金や賞与において行うというのも一つの考え方でしょう。 ただ、退職金制度を変更する場合は、社員の既得権とのからみもあり、不利益変更に伴う法的な問題をクリアしながら行う必要があります。 また、変更後における退職金制度の社内説明および労使合意の形成などをスムーズにとり行うことが大切です。 いずれにせよ、退職給付債務(簿外債務)をかかえていると、経営的にみて極めてリスクが大きいことは言うまでもありません。 また、そのことで銀行から「格付け」を低くされることが考えられ、借入または借入条件(金利)などで不利な状況となりますので注意が必要です。
かいとうかん・かいとうだんたい
岡山県産業振興財団