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江戸時代の堕胎薬と堕胎法
しつもんないよう
かいとうないよう
①『毒薬の博物誌』の「日本の毒薬」の中で、「江戸時代に実際に最も多く使用された毒は、堕胎薬であろう。毒のイメージとは別に、わが国で水銀や硫黄などの類が使われたのは、堕胎薬としてであった。この堕胎薬は享保以降の町人社会では日常茶飯に使われていたのである。(中略)堕胎専門の女医者の通称である中条流が川柳に歌われている数を見ても、この時代の堕胎がいかに多かったかがわかるであろう。(中略)この中条流が一手販売していた薬が、“朔日丸(ついたちがん)”と“月水早流し(げっすいはやながし)”といわれている。その成分は不明であるが、水銀や硫黄などであろうと思われる。」と記述されている。
②『日本婦人問題資料集成 第6巻 保健・福祉』第一部 堕胎・間引き禁止の1-3 「徳川時代に於ける『子おろし』の研究」の中で、堕胎術を施す事を生業とする仲条流について「仲条流とは豊臣秀吉の臣仲条帯刀の流を汲む事を意味するのであるが、徳川時代に入って殊にその中葉以後に至っては始め婦人科医たりしものも、殆んど堕胎を専門業とする「子おろし婆」たるの観がある。「仲条は札も流れる所へはり」とか「うき世の尻が仲条へ来」とか、「仲条の切者は一人づゝころし」とか、いふが如き或いは『松屋筆記』に
今の世仲条流子おろしの術都下に遍満せり堕胎の薬技を施す事なり。古代もさるわざ有りけん。下略
とあるが如きは明らかに仲条流なるものが「子おろし」術の一流派をさすものである事が分る。」と記述されている。
②の1-2「 避妊・堕胎・間引き」では、それぞれ県別に主に堕胎と間引きの方法について記述されている。
③「水子供養の発生と現状」の中で、「江戸時代の堕胎は中条帯刀『中条流産科全書』による、水銀での堕胎が多かった。」と記述されている。堕胎の方法としては、
「・ほおずきの根、とうがらし、椎の実の煎じたものを挿入し、ホオズキの葉、ヤマゴボウの根、ナンテンの小枝、ムクゲの小枝、吉野杉の箸などでかきだす。
・中条流の子腐り薬「檳榔子(びんろうじゃ)5分、粉にして薄荷(はっか)の煎じ汁少々、右丸くして水銀少々の丸薬の先に付け大きさ三分程の丸さにして産門に押入れ一時ばかり置く也、懐胎の時は指すべからず、一とさしにして子は腐りずるずるになり下るぞ」
と、書かれている。
④『怖くて眠れなくなる植物学』の中で七夕の節句に根を煎じて薬湯として用いられるホオズキについて「ホオズキはナス科の植物です。すでに紹介したように、ナス科は有毒な植物が多くあります。薬と毒は紙一重、薬は使い方によっては毒になります。じつは、ホオズキの根は毒があります。昔は、この毒で胎児を殺して流産をさせました。ホオズキは堕胎の薬でもあったのです。」と記述されている。
⑤『知っておきたい身近な薬草と毒草』の中で、ホオズキの毒性について「ホオズキの根は咳止め、利尿、解熱などに用いられましたが、子宮収縮薬として堕胎のためにも用いられました。」と記述されている。
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