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樺太千島交換条約
しつもんないよう
かいとうないよう
①『旧条約彙纂 第1巻 第2部』に、日本語とフランス語の条文が併記されている。
②『北方領土問題』の「3 二つの条約」には「ペテルブルク条約」の項があり、第2条について「ロシア皇帝が、日本にロシア領のクリル諸島を譲渡する規定」であり、「この条文がのちに問題になる」として、著者が「フランス語正文から忠実な日本語訳を新たに試み」たものと、外務省が1946年のパンフレットに載せた英訳、榎本武揚訳による日本政府の公式発表文を掲載している。これらを比較した上で、「榎本訳は誤訳とは言わなくても、ほとんど許容限度をこえた意訳であると言わなければならない。」とし、フランス語からの翻訳における問題点を指摘している。
また、「ロシア人はクリル諸島とは国後島からシュムシュ島までの列島をさすと考えており、南の部分は日本領となっており、ウルップ以北の部分、一八島のグループがロシア領になっているとの認識のもとで、クリル諸島のうち、ロシア領の部分を日本に引き渡すという内容の条文を作成した。ところが、榎本の訳では、さながらウルップ以北の一八島からなるクリル群島が存在し、そのすべてが日本に譲られたというような印象をつくりだしている。」という、「クリル諸島」の定義の違いを指摘している。
さらに、「榎本は、条約調印後、思い立って『新領諸島の誌を編む』ことにした。」とあり、ポロンスキー著『クリル諸島』の翻訳に補遺を加え作成した『千島誌』について、初巻之一の冒頭部分を引用した上で、「ポロンスキーの著書に述べられたクリル諸島認識を榎本もいまやはっきり受け入れていることがこの訳業ではっきりと示されたのである。しかし、この仕事は日本では公刊されなかった。千島樺太交換条約というイメージを損なう仕事を他ならぬ交渉当事者が発表するのはまずいという判断がどこかで働いたためではないか。」としている。
③『北方領土問題』の第3章の「1 樺太千島交換条約」では、「最近の文献学的研究による指摘」として、②と同様に第2条における「クリル諸島」の日本語訳についての問題が記載されている。また、「榎本のクリル諸島観の変遷」として、「交換条約締結の時点では、榎本の認識では、クリル諸島とは該条約に列挙された18島であった。しかし、そのことは後年修正され、正しい認識に到達している。(中略)榎本は個人的にこのような認識に到達したが、交換条約の榎本謹訳を修正することはしなかった。」とし、②と同様に『千島誌』(本文中では『松前誌』)の冒頭に記載されたクリル諸島についての説明部分を引用している。
④『北方領土問題と日露関係』と⑤『クリル諸島の文献学的研究』にも、②③と同様に第2条における「クリル諸島」の日本語訳についての問題が記載されている。
かいとうかん・かいとうだんたい
岡山県立図書館
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