「灰袋子」制作中の平櫛田中
井原町井原市立田中美術館提供
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- 木彫界の巨匠として知られる平櫛田中(本名 田中倬太郎(タクタロウ))は、一八七二(明治五)年井原市西江原町で生まれた。二十一歳の時彫刻家を志し、以後数々の名作を生み出した。代表作には二メートルを越す大作である「鏡獅子」や「五浦釣人」、「尋牛」などがある。昭和三十七年には文化勲章を受け、また出生地である井原市だけではなく、他の多くの都道府県で名誉市(区)民となった。今回はこの平櫛田中に関する文献を紹介する。
まず田中の作品集を列挙してみると、
(1)『百翁 平櫛田中作品集』(昭46・株式会社天満屋)
(2)『田中館所蔵作品集』 (昭47・田中館)
(3)『平櫛田中作品集』 (昭53・井原市立田中美術館)
(4)『平櫛田中名作展図録』 (昭55・平櫛田中名作展実行委員会)
(5)『百八歳 平櫛田中翁』 (昭55・井原市立田中美術館)
(6)『[彫]平櫛田中の世界』(昭55・松枝達文)
などがある。いずれも作品およびその解説、略年譜が付されていることは言うまでもないが、これらに加え(1)(2)(3)(4)には本間正義氏の田中評が載せられている。また(5)には、生前の田中と親交の深かった人々による「思い出の記」が寄せられている。(6)は山陽新聞社が、昭和五十五年四月から一カ月間、岡山県総合文化センターで主催した名作展とともに、田中の一周忌を前に編集を企図したもの。栗田勇氏による『「平櫛田中論」−人と作品』の他、掲載作品の選定から、「田中芸術の全容を集大成」しようとする意気込みが読みとれる。
伝記としては、『鉄砲虫の一生』(昭42・新田浩著)がある。これは田中九十六歳の時の略伝及び主要作品の解説、略譜よりなる。巻末には英訳文も付く。『平櫛田中』(昭63・平櫛田中伝記編集委員会編)は、児童生徒を対象として田中の生き方と作品について触れた読み物。親しみやすい記述を心がけたため、若干フィクションもとり入れられている。
『平櫛田中 私の歩いてきた道』(昭48・平櫛田中著)は、米寿を迎えた田中や文化勲章授賞時の話をまとめた、いわば回顧録といえるもの。
雑誌に目を向けると、「史談いばら」(井原史談会発行)、「高梁川」(高梁川流域連盟編集発行)などがある。
これらいずれの書からも、「六十、七十ははなたれ小僧 男ざかりは百から百から」 との名言を残した田中の活動力を感じさせられる。
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