笠岡市立竹喬美術館提供
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小野 竹喬 お の  ちっきょう

 近代の岡山を代表する日本画家である小野竹喬は、1889(明治22)年に、小田郡笠岡村(現笠岡市西本町)の商家浜中屋の四男として生まれた。14才の頃長兄の小野竹桃の勧めにより京都に出て、竹内(せいほう)栖鳳に師事した。京都市立絵画専門学校を卒業後は日本画の革新をめざして国画創作協会(国展)を設立、大正の日本画界に一時代を築いた。

 代表作は郷里笠岡付近の田園風景に南画的な趣向を凝らした「冬日帖」や、芭蕉の足跡をたどって念入りに取材し、芭蕉の心象風景に迫った「句抄絵奥の細道」などがある。昭和54年に亡くなるまでの間、竹喬の作風には変化がかなり見られるが、一貫して自然への深い愛情と共感が感じられる。今回はこの小野竹喬の文献を紹介する。

 まず、『現代日本画全集第三巻小野竹喬』(昭56・小野竹喬、池田弘著)は、竹喬の作品62点の紹介とその作品解説が載せられたもの。また、「小野竹喬の芸術」と題する伝記を池田氏が執筆している。巻末には年譜、主要参考文献を付す。

 池田氏執筆の資料としてこの他に、『句抄絵奥の細道―小野竹喬の人と芸術―』(昭53・池田弘著)がある。これは主に、著者が竹喬の現地取材に随行し、その様子を記録したものと、竹喬の伝記からなる。

 郷土雑誌の中では、「高梁川」第三十八号に広沢澄郎氏が「小野竹喬と郷里」と題する文を寄稿している。

 昭和57年に開館した笠岡市立竹喬美術館 は、その名の如く竹喬の作品の充実に努めている美術館で、当美術館発行の竹喬関係の文献は数多い。『小野竹喬奥の細道句抄絵図録』(昭59・同美術館編集)、 『生誕一〇〇周年記念 小野竹喬展』(平2・同美術館発行)は、それぞれ展覧会の作品を収録したもの。また『小野竹喬のすべて』 は、平成5年以降毎年発刊され、現在はPartVまで刊行されている。これには各巻とも50点程度の作品紹介と、「竹喬研究」と題した小論文、各作品の落款印章・印譜、年譜が載せられている。

 最後に『茜雲のなかに−父、竹喬の晩年−』(平2・小野常正著)を紹介しよう。これは、親族である著者が、 絵画への情熱を燃やす竹喬の晩年を叙述したものである。これらを竹喬の作品とともに参照されたい。

(『岡山県総合文化センターニュース』No.381、H8,6)

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