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マンボウの古記録

質問内容

日本国内のマンボウに関する記録はいつ頃から残されているのか。江戸時代に描かれたマンボウの絵が見たい。

回答内容

・『資料 日本動物史』(資料①)では、古文献上のマンボウの呼称(表記)を次のとおり紹介する。

 「マンボウ」 「翻車魚」 「浮木(うきき)」 「万才楽」 「楂魚」 「雪魚」 「鏡魚」


17~18世紀初頭のマンボウに関する古記録は、次のとおり。

・『日本博物誌総合年表 索引・資料編』 (資料②)の「資料別・動植物名初見リスト」では、寛永20年(1643)刊『料理物語』(資料③)の「浮木」をマンボウの初見資料に挙げている。

・慶応義塾図書館蔵『料理物語』の写本(資料④)には、寛永13年(1636)の跋文があり、「うきき」の名称も確認できる。
 
・「珍禽異獣奇魚の古記録」(資料⑤)では、『徳川実紀』(資料⑥)の「深川の漁夫網引して貢したる萬歳楽といふ魚」(正保3年(1646)2月5日)という捕獲の記録を挙げている。また、正保2年(1645)8月23日の記録中にも「萬歳楽にいへる魚をさゝげらるる之は紀州の浦にて漁得し所とぞ」(資料⑦)と記載されている。

・元禄10年(1697)刊『本朝食鑑』(資料⑧)の「魚鱗部」には、「楂魚」の名称による解説がある。

・宝永6年(1709)刊『大和本草 巻十三』(資料⑨)では、「マンボウ」「ウキ木」の名称で記載されている。

以上の文献③~⑨には、マンボウの絵の掲載は確認できなかった。


・澤井悦郎「正宗文庫蔵『備陽記』原本にみられた日本最古と考えられるマンボウの絵に関する考察」(資料⑩)によれば、1713年(正徳3年)頃に成立した『和漢三才図会』(資料⑪)の「楂魚」の絵は「エイの姿で描かれており、外観からマンボウと判断することはできない」ため、1721年(享保6年)の序文をもつ正宗文庫蔵『備陽記』原本に掲載されたマンボウの絵を「現状で日本最古のマンボウの絵」として紹介している。

・『日本博物誌総合年表』(資料⑬)には、「江戸時代の絵図、とくに動物図には、他人の描いた図を転写した例がとても多い」として博物誌の資料調査にあたっての留意事項が述べられている。近世以降の写本・古典籍等に描かれたマンボウの絵には、次のようなものが挙げられる。

・享保8年(1723) 『紀州熊野浦諸鯨之圖』(東京大学総合図書館)
   「満んほう」
http://gazo.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/kujira/


・松岡恕庵(1668-1746)『魚鳥写生図』(国立国会図書館)
    享保17年(1732)
   「満んぼう」
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2543098/12
    宝永6年(1709)
   「浮木」
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2543098/13
    享保9年(1724)
   「浮木」
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2543098/16


・元文6年(1741)序 神田玄泉 『日東魚譜.巻5』(国立国会図書館)
   「雪魚」
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2558318/11


・宝暦12年(1762) 勝間竜水(生没年1697-1773) 『うみのさち』(早稲田大学図書館)
   「うきゝ」
http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he05/he05_06397/he05_06397_p0045.jpg
http://www.wul.waseda.ac.jp/kotenseki/html/he05/he05_06397/index.html


・原南陽(1753-1820) 『査魚志』(国立公文書館)
   「査魚」
http://www.digital.archives.go.jp/das/meta/F1000000000000030300
http://www.archives.go.jp/exhibition/popup_jousetsu_23_1/popup_jousetsu_23_1_p0002.html


・栗本丹洲(1756-1834) 『鳥獣魚写生図』(国立国会図書館)
   「沖マンザイ」「斑車魚」
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1288514/1

  
・栗本丹洲(1756-1834) 『翻車考』(国立国会図書館)
   「翻車」
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2536150
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1286944


・佐藤中陵(1762-1848) 『海河魚属写真 魚部 ニ』〔画像15枚目〕(水戸市立図書館)
http://www.library-mito.jp/contents/kityou/tyuryou_img/kaiga_02/suraido.html


・佐藤中陵(1762-1848) 『海河魚属写真 魚部 四』〔画像10枚目〕(水戸市立図書館)
   「楂魚」
https://www.library-mito.jp/contents/kityou/tyuryou_img/kaiga_04/suraido.html


・服部雪齋(1807-) 『鳥獸魚圖譜』(国立国会図書館)
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2535932/32


・『採薬使記』 (国立国会図書館・早稲田大学図書館)
   「ウキゝ」
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2535819/28
http://www.wul.waseda.ac.jp/kotenseki/html/ni01/ni01_00790/index.html


以上のリンクは、いずれも2016年12月現在で確認できたものである。

回答館・回答団体

岡山県立図書館

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マンボウの古記録

(マンボウノコキロク)

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岡山県立図書館

(オカヤマケンリツトショカン)

情報源(回答)
情報源(回答)

①梶島孝雄『資料 日本動物史』 八坂書房,2002,652p. 参照はp.341-342.
②磯野直秀『日本博物誌総合年表 索引・資料編』 平凡社,2012,434p. 参照はp.,299-300.
③吉井始子『翻刻 江戸時代料理本集成 第1巻』京都 臨川書店,1978,291p. 参照はp.5,21.
④松下幸子ほか「古典料理の研究 (八) : 寛永十三年「料理物語」について」『千葉大学教育学部研究紀要. 第2部』31,1982年12月,p.181-224.
⑤磯野直秀「珍禽異獣奇魚の古記録」『慶應義塾大学日吉紀要 自然科学』37,2005,p.33-59.
⑥国史大系編修会『国史大系 第40巻 徳川実紀 第3篇』 吉川弘文館,1964,752p. 参照はp.430.
⑦国史大系編修会『国史大系 第40巻 徳川実紀 第3篇』 吉川弘文館,1964,752p. 参照はp.410.
⑧丹岳野必大千里『本朝食鑑 9巻』江城 平野氏傳左衛門,1697,1冊. 参照はp.26-27.
⑨貝原益軒『大和本草 第2冊』 有明書房,1975,348p. 参照はp.116,118-119.
⑩澤井悦郎「正宗文庫蔵『備陽記』原本にみられた日本最古と考えられるマンボウの絵に関する考察」『BIOSTORY』vol.26,2016年11月,p.97-101.
⑪寺島良安『日本庶民生活史料集成 第28巻 和漢三才図会1』 三一書房,1980,936p. 参照はp.675.
⑫磯野直秀『日本博物誌総合年表 総合年表編』 平凡社,2012,750p. 参照はp.6-8.

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「浮木」 『料理物語』〔画像5枚目、29枚目〕 

「萬歳楽」 『徳川実紀』正保3年(1646)2月5日

「萬歳楽」 『徳川実紀』正保2年(1645)8月23日

「楂魚」 『本朝食鑑』

「マンボウ」 『大和本草』巻13

「ウキ木」 『大和本草』巻13

「楂魚」 『和漢三才図会』巻51 〔25コマ目〕

「満んほう」 『紀州熊野浦諸鯨之圖』

「満んぼう」 『魚鳥写生図』(享保17年)

「浮木」 『魚鳥写生図』(宝永6年)

「浮木」 『魚鳥写生図』(享保9年)

「雪魚」  『日東魚譜.巻5』(元文6年序)

「うきゝ」 『うみのさち』(宝暦12年)

「査魚」 『査魚志』

「沖マンザイ」「斑車魚」 『鳥獣魚写生図』

「翻車」 『翻車考』

「翻車」 『翻車考』

水戸市立図書館蔵「海河魚属写真 魚部 二」(15コマ目)

水戸市立図書館蔵「海河魚属写真 魚部 四」(10コマ目)

『鳥獸魚圖譜』

「ウキゝ」 『採薬使記』

関連情報URL
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「槎」『節用集』(明応5)

珍禽異獣奇魚の古記録:慶應義塾大学学術情報リポジトリ(KOARA)

JAIRO | 古典料理の研究 (八) : 寛永十三年「料理物語」について

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460:生物科学.一般生物学

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