霧(きり)のおはなし  − 説明その3 −

その2からのつづき

このときの大気の状態(続き)
 話をもとに戻そう。
 図2からわかるように米子での測定資料から、当日の朝は放射冷却が起こっていたことがわかるんだ。つまり地上150mくらいまでは、地面に近付くほど気温は低くなっていたんだ。
 では、つぎにこの状態について考えてみよう。
 空気は温度が低いほど重くなるということを知っているかな? 君たちは、熱気球を見たことがあるかな。毎年11月に吉井川で日本中の熱気球愛好者が集まって競技会をやってるよね(瀬戸内バルーンフェスティバル)。あの熱気球は、なぜ落っこちないで、空中に止まっていられるのかな?
 答えは、気球の中の空気をバーナーで暖めて、周囲の空気より軽くしてやることにより、浮力を得ているんだよね。それと逆で、冷やしてやると重くなるんだ。

瀬戸内
バルーンフェスティバル

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だるまさん
 ということは、第3図の150m以下の部分では下ほど重い空気があるということだ。下ほど重いものがあるときと、下ほど軽いものがあるときとどう違うのだろう?
 だるまさんの頭を指先などで右へちょこんと突くと、左にまず傾いて、その後右や左にゆらゆら揺れて、やがてもとの姿勢に戻るよね。
 じゃあ、だるまさんをひっくり返して(ちょっとやりにくいだろうけど)、指先で突くとどうなるだろう?
 さっきのようにゆらゆら揺れるんでなく、ころりとひっくり返って上下反対になってしまうよね。
 つまり、下ほど重い状態というのは、その状態を続けやすいけど、上ほど重い状態というのは続けにくいんだ。ここで、前者のことを「安定」した性質をもつと名づけてみよう(後者の場合は、「不安定」ということになるね)。
 第3図の150m以下の空気は安定であって、その状態を続けようとしているということだ。ということは、150m以下の空気の中に何かがあったとすると、その何かはず〜っとその中に居続けようとするんだ。その何かが、小さな水滴だと霧であって、その霧が地上150mの空気の層の中に居続けようとしていることになるんだね。
 では、最後に、写真の霧の厚さは何メートルあったのか考えてみよう。また、上に書いた150mという高さと何か関係があるのかな?
 ある地点でのだいたいの高さは、まわりの山の高さをもとに、地図を見ればわかるよね。だから、霧の上面が山の斜面と交わっているところを地図の上で追いかければ、霧の上面の高さ、したがって霧の厚さのだいたいわかるんだよ。
 写真の場合についてこの方法で霧の厚さを推定してみるとちょうど100mあまりとなり、図2で示した安定な空気の層の厚さとほぼ同じであることがわかるんだ。
リストマーク まとめ
 写真からわかることは、
(1)霧の上面の形はロールパン状のものや、形の決まらないもやもやしたものがある。
(2)このときの霧の厚みはほぼ100mあまりであった。
(3)その厚みはその付近での空気の安定な層の厚みと同じであった。
などが分かったね。
このように普通に起こっている自然現象でも、あるいは1枚の写真からでもじっくりながめてみるといろいろなことがわかってくるね。
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※参考文献
1) 岡山県美作県民局湯原ダム管理事務所提供 1998年11月29日09時
2) 気象庁アメダス資料 1998年11月29日09時
3) http://weather.uwyo.edu/upperair/sounding.html
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