霧(きり)のおはなし  − 説明その2 −

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このときの大気の状態
 蒜山高原でいつもこんな状態が見られるわけではないんだ。では、どんなときにみられるのかな。
 まずはこの時の日本中の天気を見てみよう。それには「天気図」を見るのが一番。天気図って知ってるかな。地図の上に等圧線などが書いてあるものだよ。この日のこの時間に近いのを見よう。第1図がそれだ。日本の上を、大きな高気圧がすっぽりと覆っているね。こういうときは秋晴れなんだ。
 そして、こういう日は、朝はぐっと寒くなることが多いんだ。どうしてかというと、天気がいいと、地表から熱が放射されて冷えていくときに、さえぎる雲がないからなんだ。このことを「放射冷却」と呼んでいて、こういうときには霧も出やすいんだ。
 霧といってもいろいろあるけど、この場合には、朝であること、盆地であることなどから放射冷却によって冷えた地表面によってその上の空気が冷やされて発生した霧だと考えられるんだ。

第1図 天気図
(1998年11月29日9時)
 いま、「放射冷却によって・・・・・発生したものと考えられる」と言ったね。科学では「考える」ことも大切だけど、その「考えたこと」が本当かを確かめるのはもっと大切なこと。ここで書いた霧発生のプロセスが本当かどうかを確かめるためには、地上の温度と上空の温度とを比べてみるといいよ。

ちょっと難しくなってきたから、一休みしてお茶でも飲みながら考えてみよう。
 では、続きを説明するよ。
 ある日の朝、放射冷却が起こったとすれば、地上からの高さによる気温の変化はどんなふうになっているのだろう?
 空気の層の一番下が冷たい地面と接触しているのだから、空気の層の一番下が一番温度(気温)が低くて、そこから離れるほど、つまり高くなるほど気温は上がっているはずだね。
第2図 米子での当時の気温の高度変化
(地上から8km高度まで)
第3図 米子での当時の気温の高度変化
(地上から1km高度まで)
 上の第2図は、蒜山高原から一番近いところにあって上層大気の様子を測定している鳥取県米子〔よなご〕市でのグラフ参考文献3)なんだ。このグラフの数値が測定されたのは、写真を撮った日の午前9時なんだ。だから、写真の時刻とほとんど違わないときに測定されているんだよ。
(飛行機は米子付近の上空を飛んでいるので、ひょっとしたら測定している気球と飛行機とがすれ違っていたかも・・・・。)
 このグラフの見方がわかるかな。縦軸は、地上からの高さをメートル単位で書いてあり、横軸は気温を℃の単位で書いてある。青い太い線(下の方に赤い部分があるがいまは気にしないでね)は、それぞれの高さで測定された気温をつないだ線で、これを見ると高さが変わると気温がどう変わっているかがわかるんだ。たとえば、このときの地面近くの気温は6〜7℃くらい。地上8kmの高さでは、−40℃くらい、ということがわかるね。
 おっと、あっさり地面近くで6〜7℃、上の方で−40℃と言ったけど、さっき、「空気の層の一番下が一番温度(気温)が低くて、そこから離れるほど、つまり高さが高くなるほど気温は高くなっているはずだ」と言ったことと違ってるね。
 グラフからだと、放射冷却は起こっていないような感じだよ・・・。
 実は、グラフというものは気をつけないとだまされることがあるんだ。
 第3図は、、第2図の曲線の赤い部分だけを拡大して書いたものだよ。第3図によると、地上から150mくらいまでは高度が高いほど気温は上がっていて、地上より150m高度のほうが、2℃あまりも高温なことがわかるよ。これでナゾが解けたんじゃないかな。
※ちょっと一言
 グラフは自分が言いたいことを人にわかってもらえるように書くのがポイントなんだ。そういう意味で、いまの場合は図2よりも図3の方がより良いグラフだね。
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