明治２２年（１８８９）１１月に発行された地図である。この地図には山と浸水地との色分け、山崩れおよび破堤の著しい箇所への記号記入がなされている。また岡山市内の浸水地も彩色されている。地図の持主の誰かが色分けをしたり、記号を記入したりしたのである。明治２２年発行の地図なので明治２５年（１８９２）７月２３日の水害か明治２６年（１８９３）１０月１４日の水害かのどちらかの状況を示したものであろう。明治２５年と明治２６年の水害の被害状況を比較してみよう。＜明治２５年水害＞○山崩のなかった郡市・・・岡山市、御野郡、邑久郡、阿賀郡、哲多郡　○家屋被害のなかった郡市・・・川上郡、阿賀郡　＜明治２６年水害＞○山崩のなかった郡市・・・岡山市、邑久郡、吉野郡　○山崩が千箇所を越えた郡市・・・後月郡、川上郡、小田郡、賀陽郡、上房郡　○県下で一番被害が少なかった郡市・・・吉野郡　明治２５年と明治２６年の水害を比べてみると明治２５年の水害は備中地域の被害が少なく、明治２６年の水害は逆に備中地域の被害が多い。また地図中の吉野郡のところに山崩の記号が記入されている。以上のことからこの地図は明治２５年の水害の被害状況を示したものだと推測できよう。

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