江戸幕府は１６０３（慶長８）年、１６３８（寛永１５）年、１６４４（正保元）年、１６９７（元禄１０）年、１８３４（天保６）年に諸藩に国絵図の提出を求めている。これら国絵図の様式は寛永・正保頃に幕府によって整えられ、縮尺六寸一里（Ｓ＝１／２１６００）などが示された。本図は小さいながら、国絵図の体裁をよく反映している。すなわち郡毎に色調をかえ、郡境を黒線、国境は線を用いずに示し、道筋・航路は朱線で、一里塚は朱線を挟んで黒点二つで示す、村は村名を楕円で囲んで表示するなどである。本図では１８２３（文政６）年に干拓が完了した興除新田に置かれた東疇・中疇・西疇の新村、１８５２（嘉永５）年には福田新田の開発によって成立した北畝・中畝・南畝の新村名が認められる。なお当時は新田開発による新村には村という漢字を当てると、幕府への届けに差し障ることから意図的に避けられていた。以上から本図は少なくとも、１８５２年以降に作製された国絵図と考えられる。

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