本図は裸祭りで知られる岡山市西大寺観音院の会陽を描いた錦絵である。現在の建造物と比較すると、伽藍配置が異なるなど幾つかの差異が見いだされる。中でも現在の本堂は向拝（正面の庇状の屋根部分の辺）が三間、４本柱になっているが、絵図は一間、２本柱になっている。現在の本堂は１８５４（嘉永７）年の焼失後、１８６３（文久３）年に再建されたものである。１７４７（延享４）年の記年がある「伝法灌頂三昧耶戒道場之図」では、旧本堂の向拝は錦絵と同じ一間となっている。したがってこの絵図は嘉永年間の火災以前の旧本堂を示した図と考えられる。また図では石門が描かれている。石門は１８１９（文政２）年に完成している。以上からこの錦絵は江戸後期の文政から嘉永年間（１８１９〜１８５４年）にかけての状況を伝えたものといえる。なお版権をもつ湊屋は西大寺市場町に同じ屋号が明治２０年代にあったことが確認されており、本図は地元西大寺で製作された可能性が高い。なお西大寺会陽を伝える絵画資料の代表として１５０７（永正４）年の金陵山古本縁起　（西大寺縁起）、１８７７（明治１０）年の狩野永朝筆の大絵馬（西大寺観音院所蔵）がある。

出版年不明

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