書写資料
古川(ふるかわ)古松軒(こしょうけん)が天明8年(1788)、幕府巡見使に付き従って奥羽・蝦夷地(現東北地方・北海道)へ出かけた旅の紀行。10巻10冊。写本。書き写された年代、写した人とも不明。記事は天明8年5月6日の江戸出発に始まり、同年10月18日の江戸帰着で終わるが、本来あるべき挿絵はすべて省略され、文章のみを書き写したもの。巻末に、小沢荊山、藤田一正、浦池九淵(うらいけきゅうえん)の序文が収められている。本書も「東遊雑記」(W290/74)も写本であるが、現在古川古松軒自筆の「東遊雑記」が伝わらないため、相違する記事の詳細は明らかでない。古川古松軒(1726〜1807)は備中国下道郡新本(しんぽん)村(現総社市新本)に生まれ、のち岡田(現真備町岡田)に住んで薬種業を営んだ。実証的地理学者として知られ、寛政元年(1789)老中松平定信に謁見し、寛政6年(1794)に武蔵国の地理を調査した功績で、翌年郷里の岡田藩主伊東長寛(ながとも)(1764〜1850)から士分に取り立てられた。「東遊雑記」は『近世社会経済叢書』第六巻、『日本紀行文集成』第一巻などに収録されている。(文責:岡山県立図書館)
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